デザイナー・五十嵐久枝の遊具づくりに密着
2016.01.15

ジャクエツから新たに販売する新作遊具「Seed(シード)」。こちらのデザインを手がけたのは、インテリアデザイナーの五十嵐久枝さんだ。1児の母でもある五十嵐さんは、これまでも、子どもたちのためになる木製遊具や柔らかいポリウレタン素材を使った遊具など、数々のプロダクトに携わってきた。そんな五十嵐さんが手がけた最新作「Seed」は、今までの保育現場には存在しなかった、斬新なデザインや素材を使用している。今回は特別に、Seedの試作チェック現場に密着させてもらい、五十嵐さんのSeedにかける思いを伺った。

最新型遊具「Seed」は私たちに一体何を見せてくれるのか、その開発現場に密着。

― 五十嵐さんが新たにつくられた遊具「Seed(シード)」こちらの名前には、一体どのような思いが込められているのでしょうか。

今回新たに製作した遊具のコンセプトは「好奇心の種」です。新しい遊具をつくろうと決まった時に、最初から大事にしようと決めていたのは、子どもたちの好奇心や探究心、感性など、いろんなエネルギーのもととなる“種”でした。そこから生まれたのがSeed(シード)という名前です。子ども心をくすぐるような、多面的に刺激のあるデザインにしたいという思いから「好奇心の種」という言葉をイメージしたんです。発芽させて、子どもの想像力をより成長させるものになればと思っています。

― Seedを見てみると透過性のある素材が使われていますね。この素材や、柔らかなフォルムにはどういった意図があるのでしょうか。

今回ひとつの試みとして、透過性のあるFRP素材を使った遊具を制作することを決めていました。過去につくられた遊具にも、透過性素材を使用しているものはありましたが、遊具全体に透過性FRPを使用して制作したのは今回が初めてだと思います。
透過性の面白さは「内側と外側」「静と動」の世界をつくり、子どもたちにお互いの存在を意識させることができるところです。トンネルの中が静的な隠れ家スペースだとすると、ドーナツ型の山の上は動的なオープンスペースで、全く正反対な世界観です。
私が過去に「ソフトドームスライダー」という、柔らかい小さな山のような型をしたトンネル付き滑り台を制作したことがあります。その遊具の制作を通して気づいたことがあって、子どもたちは建物の隅っこや影のある場所に隠れることが大好きなんです。トンネルに入ることで気持ちを安心させたり、隠れ家として使って遊びます。子どもがトンネルに隠れたがる自然な行動の中に、“透過性”を加えることで、内側と外側にいる人がお互いの様子を伺えたりと、普段見えない世界をSeedで体験することができます。きっと透過性が入ることにより、今まで見たことがないようなあそび方が生まれ、子ども同士のコミュニケーションも増え、関係性が広がっていくと思っています。

― 完成したものを目の前にしていかがでしたか。

試作確認の際、2人の子どもたちにも遊んでいただきましたが、大らかな丸みを持ったユニークな形状を活用して滑ったり、抱きついたり、トンネルをくぐったり、へこみ部分に寝そべったりと、理想通りの様々なあそび方をしていました。
また、ブルーカラーの遊具は、エッジ部分が発光してキラキラ輝き、透過性もあるので大きな水滴やガラスのようにも見えて、普通の素材とはまた違った表情が楽しめます。目指していたものができたと思います。

― 子どもたちに提案したい、ユニークなあそび方などはあるのでしょうか。

子どもたちにはがむしゃらに遊んでもらいたい、その一言につきます。Seedを使い続ける中で、今までにない発見や言葉や行動が生まれていくのが楽しみです。

Seedに登って遊ぶ友達を、トンネルの中から見て反応したり、外にいるお母さんがぼやっと見えたり、はしゃいで遊ぶ声が早く聴きたいです。先ほどSeedで遊んでくれていた子どもたちは、Seedのことを「お城」と呼び、Seedを使った物語を考えてくれていました。子どもたちはすぐに物語を考えだすんですよね、家にしたり、遊具にしたり、お城にしたり。私たち大人とは全然ちがう発想力を持っているので面白いです。

― 遊具をつくる上で気をつかわれているポイントはありますか。

子どもたちや親御さんに安心して遊んでもらえるように、安全面に力を入れています。Seedは、決して高さのある遊具ではありませんが、この高さは落ちたら危険じゃないかとリスクを考えて、高さを5センチ10センチと下げて、微調整を繰り返しました。大きな遊具を調整するのは大変なことではあるのですが、とても大事なことなので念入りにチェックしています。

― デザインは、子どもたちの為に何か力を与えることができるのでしょうか。

見た目が可愛い、きれいといったことはそこまで重要ではなく、子どもたちに考えさせたり想像させるような余白のあるデザインを提示できれば、まだひらかれていない才能を開花させるきっかけを与えることができると思います。その余白の表現方法はデザイナーによって違うと思いますが、私の場合ですとSeedがまさに、考えさせる余白を与えたデザインそのものなんです。

Seedを通して創る、こども環境の未来とは

今回開発したSeedは、素材やデザインなど従来の遊具になかったものを多く取り入れました。2015年11月にSeedは販売されますが、Seedで遊んだことで子どもたちに何かいい結果を残すことができれば、次世代の遊具のスタンダードになるのではないかと思っています。子ども大人関係なく「素敵だね」と、多くの人に言われるようなプロダクトになれば嬉しいです。

いつもつくりたいと思っているのは、静と動の2つの世界観から、子どもたちが無意識に自分ならではのあそび方を組み立てることのできる遊具です。先ほども少しお話ししましたが、こちらはあそび方を提案しすぎず、子どもたちが自由に考えて使える余白をつくっておきたいと考えています。

楽しみにしているのは、子どもたちがSeedで遊んだ経験を通して、ストーリーをつくっていろんな人に向けて語ってくれることです。幻想の世界を頭の中に描いて、Seedの絵を描いたり、Seedについて面白い言葉で表現したり、Seedから受けた刺激をなんらかの形でアウトプットしていってほしいです。そして、Seedの話を聞いた友達や家族が、また違うアイデアやストーリーで話したり、いろんな人たちの中で刺激のキャッチボールがおこなわれることで、子どもの創造力が磨かれ続ける環境が生まれると思います。

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