【対談】「プレイコミュニケーション」シリーズ・デザイン秘話 後編~「あそぶだけで」から広がる世界
2018.07.25INTERVIEW

編【カラーリングに込めた想い】はこちら
 

1つの言葉から発想する無限のあそび

 
長沢:プレイコミュニケーションは、前身の「ディノワールド」がもっていた「4つの運動スキルを育む」というコンセプトに加えて、新たに、「5つの側面(身体的・社会的・知的・精神的・情緒的)を育む 」という考え方をもつシリーズです。コンセプトブックやパンフレットではそのコンセプトとリンクさせながら伝えることをしたかったのですが、今回、三澤さんや川原さんにつくっていただいものを見て、僕ら社内の担当者の感覚で伝えるものとは全然違うと実感しました。人間科学の視点でプレイコミュニケーションを監修いただいた前橋 明先生(早稲田大学 人間科学学術院 教授)の理論を伝えることも大事でしたので、文章をつくる上で、川原さんにとって制限が多いお仕事だったと思います。そんななかでも「知らない人でもわかるように」とずっと言い続けてくださいましたよね。実際にはどんなふうに言葉を選ばれたのですか?
 
川原:プレイコミュニケーションを一言でいうなら「あそぶだけで」という言葉に集約できると思います。でも“で”を抜いた「あそぶだけ」は私がつくった言葉ではなくて、いただいた資料のなかでも頻繁に使われていたキーワードで、この遊具をつくるときのスタートになった言葉ではないかと感じました。
 
 
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日本デザインセンターの川原 綾子さん(右)

 
長沢:パンフレットなどをつくるとき、私たちはついつい、つくる側の目線で語りたくなってしまいます。でも、本当は、遊具は子どもが遊ぶものであって、子ども自身は「バランスをとるスキルを鍛えよう」とか「あそびながら社会的側面が育ってるな」なんて思わないわけで(笑)、ただ無意識に遊んだ結果、(大人から見て)育まれているにすぎない。子ども目線をパンッと一言で表したときに、「あそぶだけで」は最高の言葉だと思いました。川原さんが、「『あそぶだけ』の最後に『で』がつくだけで、余韻が生まれてその後にいろんな言葉が続いていく」とお話されたのを聞いたときに、僕のなかでこの言葉が腑に落ちました。
 
川原:「あそぶだけで」から広がるいろんな言葉は、前橋先生がお考えになった「プレイコミュニケーションで得られる効果」を中心に考えていきました。書いていてすごく楽しかったですね。「真似してみる」とか、「発散する」「落ち着いてくる」「器用になる」「どちらか選ぶ」「だんだんできる」「本気になる」‥‥もう無限に広がって、プレイコミュニケーションって本当に面白いと思いました。幼稚園や保育園の先生方はあそびのプロなので、きっと、もっとたくさんの言葉をお持ちだと思います。先生同士で言葉を考えていただくのも楽しいかもしれません。
 
長沢:「あそぶだけでワード」のような絵本があっても面白そうですね。それを見ながら「この保育園では、プレイコミュニケーションであそぶだけで、どんなことがありましたか?」と聞き合ったり。
 
川原:あそぶだけで、喧嘩になっちゃったけど、そのあと‥‥みたいなね。コンセプトブックの撮影では、子どもたちがあそぶだけで本当に余韻のある写真が色々と撮影できて、とても良い感じになったと思います。
 
長沢:コンセプトブックの導入部分では、見開きで写真が大きく掲載されて、たった一言だけ言葉が添えられています。僕らが今までにつくった冊子にはない見せ方をしていただいて、遊具の伝え方に対する印象が大きく変わりました。
 
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  人がつながりドラマが生まれる場所

 
川原:つくった私どもが言うのもなんですが、ページをめくりながら子どもたちの楽しそうな様子を見ていると、プレイコミュニケーションのなかで始まるドラマみたいなものを感じて自分でも感動しました。撮影では子どもが大泣きするシーンもありましたよね。
 
長沢:「いっせーのー滑ろう!」と言い合いながら一人だけ取り残されて泣いたり、雲梯ができなくて泣いたり。でも子どもたちは、朝の10時から夕方4時まで全然飽きずによく遊んでくれました。
 
三澤:その様子を見ながら、実は私、感動して物陰で泣いてたんです。
 
長沢:え、本当ですか?!
 
三澤:子どもたちがだんだん遊具を使いこなしていって、コミュニケーションが生まれていくのを目の当たりにして、予想外の適応能力につい感動してしまい‥‥。
 
長沢:変化が目に見えてわかりましたよね。
 
三澤:子どもたちが喧嘩してしまって「どうしよう」と思っていたら、仲間はずれになった子どもを助ける子どもが現れて、「よかったなあ」と思ったら泣いてしまいました。「あそぶだけで」が数時間の間に視覚化されていて、すごく感動しました。
 
川原:ただ「あそぶだけ」でも学びや育みが生まれるのがプレイコミュニケーションの特徴ですが、このコンセプトブックでは、各遊具パーツに対して「上下左右自由に」といった呼びかけの言葉をリードに用いています。大人が一言を添えると、さらにあそびが広がるということを前橋先生の本で知りました。
 
長沢:最近、園に行って遊具で遊ぶ様子を見ていると、先生たちは、まず、子どもたちに「何々ちゃーん」と名前を呼んで声をかけます。でも、次に、「ダメ」「危ないからやめておきな」と声をかけることが結構多いな、と感じます。おそらく先生たちは、管理者として、怪我をさせずに無事にお家に帰らせてあげるという部分もあって、遊具で「こうしてみよう」と声をかけて、万が一、子どもが落下したりした場合の責任問題を気にしていることもあるかと思います。もちろんそれは大事なことですが、一方で僕は、やはり、先生方にはもっとあそびを引き出す言葉やフレーズを投げかけて欲しいと思いますし、私たちも「こういうあそび方もしてみましょう、だけどこんな危険もありますよ」と、両方の発信をしていかなければと思っています。今回のコンセプトブックには、そういう意味でもこれからのヒントが仕込まれていて、社員にとっても良い土台になってくれるといいなと思います。さて、今回、開発に関わっていただいたのを機に、最後に何か今後に向けてのお考えやご意見があればお願いできますか?
 
三澤:私はこれからの遊具が、今まで介入できなかったポジションや社会のなかにどんどん入っていって欲しいな、と思っています。遊ぶためだけでではなくて、休むためだったり、大人と子どものコミュニケーションが生まれるものだったり。今までにない概念に触れる遊具ができていくことをとても楽しみにしていますし、応援しています。
 
長沢:僕は自分でもよく5歳と3歳の子どもと公園に行きますが、遊具であそんでいる子どもを見ながら、親はベンチでスマホをしているというような光景をよく見ます。もっと親が子どもと一緒に遊べたらな、と思いますね。
 
三澤:大人が恥ずかしがらずに遊べる遊具、例えば、大人も登れる見晴台や、道線が複雑で大人も楽しめるものなどがあったら楽しそうです。
 
川原:私なども会社で机のレイアウトが変わるだけでワクワクします。何か、それを遊具と言わないとしても、それがあることで、大人のコミュニケーションの問題が解決するものがつくれるといいかもしれません。
 
長沢:子どもだけでなく、大人と子ども、先生と子ども、大人同士をつなげるプレイデザインですね。今の業界の常識にとらわれない形でチャレンジしていけるといいです。ぜひ、これからもご提案ください。本日はお忙しいなか、ありがとうございました。
 
 
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PLAY COMMUNICATION プロジェクトメンバーで

 
 

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