環境を活かし切って生まれた、世界最長の雲梯(うんてい)。 新しい時代、公園が目指すべき姿の旗印へ
2021.03.23あそびをつくる

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2000年、東神戸フェリーセンター跡地にオープンし、2020年に迎える開業20周年に向けて、大規模なリニューアル工事を実施した大型複合ショッピングセンター「サンシャインワーフ神戸」。その中でも、地元の活性化につながるモニュメントとして設置された、149.992mの長い雲梯が話題を呼んでいる。これは施設内の神戸港に面した岸壁の長さを活かし、地域の子どもたちが楽しめて、且つ健康増進にもつながると考えたところから生まれたアイデアであった。2018年12月に完成したこの雲梯は、ギネスワールドレコーズリミテッドが認定するギネス世界記録(※注1)において「最も長い雲梯(Longest monkey bars)として認定された。
設置後は、雲梯をメインとしたイベントが盛況を博しているほか、たくさんの親子連れが訪れている。雲梯と同時期に設置された、幼児対象のベビールームや児童対象のプレイルームへの想いも含め、サンシャインワーフ神戸管理事務所の丸川氏と内藤氏にお話を伺った。
 
※ギネス世界記録®はギネスワールドレコーズリミテッドの登録商標です。
 
 

防災区域の持つ様々な厳しい制限の中、サンシャインワーフ神戸だから導かれたアイデア。

 

―雲梯の設置までに至る経緯を教えてください。

丸川:経緯をお話しすると、実はもともと、初めから雲梯にしようと決まっていたわけではなかったのです。当初は、ショッピングセンターの2Fに広がるウッドデッキに海賊船の大型遊具を設置したらどうか、という提案を頂いていました。しかし、そのためには1Fから補強する必要があり、耐久性の問題もあって断念しました。
 
内藤:私は当時の会議に参加していませんが、「海に面した直線部分の長さを活かせるものはないか?」且つ「撤去しやすいものはないか?」という討議が行われたと聞いています。そこで「雲梯が面白いんじゃないか」という案が出てきたそうです。調べてみると、雲梯の長さでギネス記録があり、150mの長さでその記録が更新できるとわかりました。東神戸フェリーセンター跡地に面する岸壁の長さは150mを超えています。「これならサンシャインワーフ神戸でつくれる!」と設置プロジェクトが動き出しました。
 
丸川:ただし、ショッピングセンター施設の前に展開する広場は、防災区域フェリー乗り場として神戸市から指定された公安設備です。災害時などの船着き場としての機能を阻害するものは設置できないとされていました。また、海沿いに設置するのであれば、簡単に撤去できるものでなくてはいけませんでした。「撤去が容易に行えること」「憩いの場としてのお客様へのサービス向上」「長い距離を持つ岸壁を活かした特徴ある設備」というポイントをクリアすることで神戸市の認可を得て、改めて雲梯の設置に踏み切ることができました。
 

―遊具の安全性に関してはどうですか?

内藤:従来に屋外遊具・サンシャインキッズの設置をジャクエツさんにお願いしていたこともあり、施設遊具におけるイメージの調和と、細やかな安全対策に対する意識の高さから、今回もジャクエツさんに依頼することにしました。実際、雲梯の設置に、細かな構造計算が施されていると聞いて安心しました。雲梯が倒れるような状況として考えられるのは、両サイドに走るパイプの片方に大きな比重が掛かった時だそうですよね。でも今回の雲梯は、構造計算上150人がぶら下がっても問題ない、と。もしもの状況まで考えて設置してくれているので助かります。
 
丸川:雲梯の下に敷いてもらった特注のマットもありがたいですね。雲梯の高さに合わせて、衝撃吸収度を考慮したとのこと。通常の遊具の下に敷くマットよりもふくらみが大きいので、弾むクッションマットとして遊んでいる子どもたちをよく見かけるくらいです。万が一、落ちても大丈夫だし、遊びに使うのも大丈夫ということですね。
 
内藤:しかし、そこまで高い安全意識の下で、細かく丁寧に作って頂いただけに、長さが足りなかったのにはびっくりしました(笑)。ギネスのスタッフの方が雲梯の長さを測量して「149.992mです」と伝えてこられた時には、あれ?「きっちり150mのはずなんですが」と。12月の特に冷え込む日だったためにほんの少しだけパイプの素材が縮んだという理由を聞いて、笑ってしまいました。きっと、きっちり150mのサイズだからこそ生まれた結果なんですよね。おかげで、お客様に「なんでこんな中途半端な数字なの?」とツッコんでもらえる良いネタができました。「夏だったら160mくらいになりますよ!たぶん」とお返事しています。
 
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東神戸フェリーセンター跡地に面する岸壁の長さを活かした雲梯

 
 

予選の枠を超えて集まった参加希望者。

次につながるイベントとなった「サンシャインカップ」
 

―「サンシャインカップ」の反響はどうでしたか?競技イベントも実施されていましたね。

 
内藤:設置時は、地元関西のテレビ局が4社ほどいらっしゃって取材していきました。雲梯だけの力でもないと思いますが、親子連れのお客様が増えてきている気がします。
競技イベントとしては、2019年4月に1分間チャレンジ大会を行いました。これは、2018年9月より行っていた施設全体のリニューアルが同年の4月に完了したタイミングに合わせて行ったものです。握り棒を飛ばさずに、1分間にどれだけ進めるかという内容で、非常に好評を得ることができました。それを受けて、同内容のチャレンジイベントを「サンシャインカップ」と銘打ち実施。5月から10月までの半年間を予選とし、11月に決勝戦を行いました。
 
丸川:イベントは非常に盛り上がりましたね。毎月の予選枠は30名限定だったのですが、いつも枠を大きく超えて40〜50名が集まり驚きました。決勝戦は、専用のステージやMCも準備。大勢の観客がいる前で、予選を通過した7名によって争ってもらいました。表彰式では、上位3名に商品券をプレゼントしました。このイベントは、今後も継続して行っていきたいと考えています。
 
内藤:そういえば、サンシャインカップには参戦されませんでしたが、雲梯界では有名な「雲梯おじさん」という方が足を運んでくださいました。全国のいろんな雲梯にチャレンジされている方で、弊社の雲梯もずっとやってみたかったとおっしゃっていました。そんな方の耳にも届いていて光栄でした。いざ挑戦されたら、なんと、一度も雲梯から下りずに3ターン(450m)をクリア。驚愕でしたね。
 
 

週末は大勢の子どもたちで賑わう2つの空間。親御さんの視点に徹して完成した軌跡。

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1Fに設置された恐竜たちが出迎えてくれるプレイルーム。

 

―雲梯の他、1Fのプレイルーム設置と2Fベビールームのリフォームについても経緯をお教えください。

 
丸川:サンシャインワーフ神戸にご来場頂いているお客様はファミリー層が中心です。まず児童が、雨天でも暑くても寒くても、楽しく遊んでもらえる場を作りたかった。さらに、3〜10歳限定の空間をつくりたいと考えました。多くの施設で児童と幼児の遊ぶ場所が一緒になっている場合がありますが、よちよち歩きの幼児と全力で走り回る児童が一緒の空間で遊ぶのは、親御さんの視点では恐怖を感じます。以上を踏まえて本施設では児童と幼児の空間を分け、ベビールームには、授乳室やおむつの交換台も設置しました。特にベビールームを利用くださっている親御さんたちからご好評を頂いています。
 
内藤:2019年のゴールデンウイークに、プレイルームとベビールームの来場客にアンケートをお願いし、83.6%の方から「満足」のご回答を頂きました。また、幼児が自動ドアに挟まる危険を未然に防ぐための安全柵設置や、多くの子どもたちが利用することを考慮した室内の定期的な除菌清掃など、アンケートでいただいたご要望についても、順次反映していきました。結果、現在、週末は常に想定以上の数のお客様をお招きしています。そういえば、靴箱も当初の予定は30足分でしたが、最終的に100足分を超えた容量が入れられるタイプの設置をしていただきました。
 
丸川:プレイルーム、ベビールーム両方に関して言えますが、トータルでコーディネートして頂いたのも、好評に繋がっていると思っています。遊具は、カラーなど統一感があると世界観が生まれます。見た目の楽しさがグンと上がります。写真映えするので、わが子の写真を撮っている親御さんの姿はよく見かけますよね。先日、ベビールームで、「うちの子、初めて立った!」と言いながらお子さんの写真を撮っている方がいらっしゃいました。また、本施設は、駐車場が無料であることも強みとして機能していると推察します。子どもを連れて遊びに行く場所がどんどん少なくなっている昨今、雨天でも連れて行ける場所があるというのは喜ばれている一つのポイントではないでしょうか。
 
内藤:幼児対象のスポーツ教室をしているNPO団体から、プレイルームの隣の空部屋を借りたいというお申し込みを頂きました。キッズスペースをたくさんの子どもたちが利用しているのを見て、決めたそうです。
 
 

―今後の展開をお教えください。

丸川:大規模なリニューアル工事を終了して、ご好評頂いている各設備の維持を中心としながら、時代に合わせて効果のある販促や魅力あるイベントを行っていきたいと思っています。雲梯やプレイルーム、ベビールームは、強みのひとつになると考えています。
 
内藤:昨今、公共施設等の建設や維持管理、運営等を民間に委託する流れが主流になりつつあると聞きます。今考えれば、サンシャインワーフ神戸はその先駆けとなったわけですが、世界最長の雲梯は、「ここにしかない公園づくり」のひとつのきっかけになってくれているように思います。環境を活かして、もっとオリジナリティを出して、話題をつくっていきたいですね。
 
丸川:プレイルームは今はまだ賑わっていますが、何年か過ぎればマンネリ化してくると思うのです。子どもは成長して入れ替わるからいいのでは?と思うかもしれませんが、やはり、時代に合わせて遊びのトレンドも変わると考えます。遊びにとって変わらず大切なことと、変わり続けるトレンドをしっかりキャッチしていきたいですね。
 
※新型コロナウイルス感染症対策の為、プレイルームは現在閉鎖しています。
 
 
 
 
 

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