「みんながつながる幼稚園」を目指して −新園舎を建てた園長の想い-
2018.01.15INTERVIEW

子どもたちが過ごす場をいかにつくっていくか。これは大人に課せられた大きなテーマである。しかし、建物だけでなく、周りの環境も共に整えることを考えながら子どもたちが過ごす場を作る……となると一大事業だ。 今回、プレイデザインラボでは、たくさんの苦悩を超えて、新園舎を建てた、ある園長にお話を伺ってきた。
 
 

< 中村 妙子 氏 >

大阪府堺市 常磐会短期大学付属 いずみがおか幼稚園 園長。 昭和46年(1971)年に創立した幼稚園を継承し「遊びはとまらない」という保育のスタイルを実践。 1998年より預かり保育を開始、2004 年には認証保育所を開所し、2005 年には大阪府で唯一、総合施設モデル事業に選定される。2007年に幼保連携型認定こども園「いずみがおか幼稚園」を開園。新園舎の建て替えプロジェクトでは、第8回キッズデザイン賞を受賞。
 
 
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子どもがまんなか。つながる保育の実践のために

大阪府堺市の住宅地の中にある、いずみがおか幼稚園の園舎。 この園では、「つながる保育」が行われている。
 
教える、育てる「教育」ではなく、共に育てていく、育ちあっていく「共育」。
中村園長が語る「共育」とは。
 
 

■子どもたちと自然の「つながり」の場

―新園舎は、自然採光を多く取り入れられていますね。風が通り抜け、四季の変化を感じる要素も大切に考えられているように見えますが、なぜ、自然を取り入れることにこだわりをもっているのでしょうか?
 
中村園長:例えば天気の悪い日でも、雨の音を楽しみながら水たまりを見つける、川に出会う。木の匂いを感じたり、木の穴から蜜が出ていることを発見したりする。このように、自然が教えてくれるものは、たくさんあります。ですが今は園舎(施設)があり、それが恵まれているために、子どもたち自身の力で、色々な発見ができなくなってしまっているように思いました。
 
そこで、今回の園舎では、外を感じられる要素を取り入れたいと考えたんです。例えば、雪が降るような寒い季節には、風の冷たさを感じ、寒くなってきたということに気づくことができます。それに、窓の外を見て雪が降ると、子どもははしゃぐでしょう。外へ出て、何をしようとワクワクしながら、みんなで一緒に考える。 そんな時、先生が「今絵本の時間でしょ、だからダメ。」と声をかけてしまうと、外に繋がる扉を閉ざしてしまうことになります。 そういった子どもの心が動く瞬間には、先生も一緒に心を動かして、「雪だね、すごいね、何しようか。」と言えるのが一番ですよね。
 

いずみがおか幼稚園いずみがおか幼稚園の新園舎。靴を履き替えない「一足制」を導入したことで、子どもたちの気づきを止めずに園庭で思うがままに遊べる環境を実現している。

 
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旧園舎で子どもたちを見守った くすのき。姿を変え、今も子どもたちを見守っている。

 
 

■子ども同士の「つながり」を育む場

―新園舎には、公園にもあるような山のかたちで、大人数で一度に滑れるすべり台がありますね。このすべり台にも何か中村園長が考える「つながり」があるのでしょうか?
 
中村園長:園庭解放の時も、すべり台は人気の遊具です。これは、何度も設計の方と相談を繰り返し、こだわって作りました。すべり台って、角度があればあるほどスリルが生まれるでしょう。ここは、幼保連携型の園ですから、2歳くらいの小さな子も一緒に楽しめるものがいいなと思い、ゆるやかな傾斜にしました。 はじめは、すべり台で遊ぶ時にスリルを求める年長さんは楽しめないと思っていましたが、実際は年齢問わず、みんな楽しそうに遊んでいます。お友だち同士で一緒に滑れるので、一人でチャレンジするだけでなく、一緒に楽しむことができる。誰かと共に滑って楽しいという感覚から、同じ感情や体験を分かち合えると思います。
 
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みんなで一緒に滑れる大きなすべり台。

 
 

中村園長が考える「共育」とは

―今回、自然や子どもたち同士の「つながり」をお話しいただきましたが、中村園長ご自身が「つながり」を大切にしようと考える源流はどこにあるのでしょう?
 
中村園長:大人でもコミュニュケーション能力って重視されますよね。子どもにも、それが必要な場面は多いんです。一緒に遊びたい、だから入れて、って言いたいのに、それが言えなくて、自分の中にもやもやとしたものを溜め込んでしまう。そして、苛々して、お友だちに感情をぶつけてしまう。喧嘩しても、謝り方がわからない。これではちょっと悪循環ですよね。あそび道具にしても、自分も遊びたいけれど、どうやって貸してもらったらいいかわからない。わからないから突き倒す、行動に出てしまう。そういった子どもたちの様子を見ていたら、コミュニケーション能力をきちんと育て、発揮していく、人同士が「つながっていく」ことの大切さを改めて感じたんです。
 
―だから、中村園長は「つながる保育」をご自身の園で始められた。たくさんの子どもたちの様子を見てきたからこそ、今回の新園舎のいたるところに「つながり」を取りいれる場を作られたという訳ですね。
 
中村園長:そうですね。コミュニケーションにしても、何かに気づくことにしても、一人よりもお友だちと一緒のほうがうまくいく。数値化することはできないけれど、誰かと一緒にいること、一緒に育つこと。「つながり」を持つことで、子どもたちはより成長していきます。 そして、それが生んだ安心感は、子どもが自己決定をしていく助けにもなるはずです。安心できる場所だからこそ、新たに子どもたちのやりたいことが見つかる。みんなが育ち合っていく環境をつくっていくことが、私たち大人にできることでもあるのではないでしょうか。
 
―最後に、新園舎に寄せる想いを聞かせてください。
 
中村園長:「教育」って、教える、育てるって書きますよね。でも、そうではなくて共に育てていく、育ちあっていく「共育」でもあると思っています。一緒に育つことで生まれる、誰かと一緒にいて楽しい、経験して楽しい、という体験を新しい園舎の中で、これからも子どもたちに与えていきたいですね。
 
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いずみがおか幼稚園の中村園長

 
 
 

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